支配欲は男の本能なのか? 〜本能・文化・構造からモラハラを考える〜

はじめに:モヤッとした一言から

ある日、ふと耳にした言葉に胸がざわついた。

「お前が休むのと、俺が休むのじゃ金額が全然違うんだよ」

言ったのは夫らしき男性。言われた女性は、静かにうつむいていた。
前後の文脈は不明だけれど、明らかに支配的な空気が漂っていた。

その一言をきっかけに、こんな疑問が浮かんできた。

「支配したがるのは、男性の本能なのか?」
今回はこのテーマを、本能・文化・社会構造、そして発言の背景心理から掘り下げてみる。


1. 支配欲は本能なのか?

男性ホルモンと“競争本能”

進化心理学によれば、男性は長い歴史の中で「外の世界で獲物を得る・競争に勝つ」という役割を担ってきたとされる。
その中で自然と強化されてきたのが、序列を意識する傾向だ。

・テストステロン(男性ホルモン)=攻撃性・競争性・支配性の増幅
・集団内で優位に立つ=生存率・子孫繁栄に直結

こうした背景から、「支配したい」という衝動が男性に多く見られるのは確かに一理ある


2. 女性に支配欲が少ないのはなぜ?

共感・協調型の生存戦略

一方、女性は人類史において「協力して子を育てる」役割を担ってきた。
その中で磨かれてきたのは、共感力・空気を読む力・調和を保つ力だ。

もちろん女性にも支配欲はあるが、それは
・言葉でコントロールする
・心理的な距離を操作する
といった間接的で繊細なスタイルになることが多い。


3. 発言の背景にある心理とは?

■ 言った男性の心理

「お前が休むのと俺が休むのとでは金額が違う」と発する人の内面には、いくつかの心理的背景がある。

  • 経済的な不安:「もし自分が倒れたら家庭が崩壊する」という恐れ
  • 優位性の維持:「稼いでいる側の自分が偉い」という思い込み
  • 自己肯定感の低さ:「お金でしか自分の価値を証明できない」心理

このような背景から、相手の貢献(家事・育児・感情的支え)を「ゼロ円」扱いしてしまう。

■ 言われた女性の心理

この言葉を受け取った側は、深く傷つく可能性がある。

  • 自分の存在価値を否定されたように感じる
  • 経済的に依存している罪悪感を刺激される
  • ✔ 「私は休む資格がない」と自己肯定感が下がる

一度や二度の発言ならまだしも、これが日常的に繰り返されると、精神的なモラルハラスメントに発展する。


4. 「相手の価値=金額」という危うさ

人間の価値を「金銭的貢献」でしか測れないことには、深くて根本的な問題がある。

・稼ぎが少ない人は価値が低いのか?
・病気や介護、育児に専念する人には価値がないのか?
・愛や支え、ケアは「ゼロ円」だから無意味なのか?

そんなはずはない。

本当に大切なものは、目に見えない貢献や、存在そのものだったりする。
金額でしか人を評価できない関係性は、いつか崩れる。

それは、相手にとっても、そして自分にとっても悲しいことだ。


5. 経済的余裕とモラハラの関係

「お金のある・なし」は本質ではない

よくある誤解に「モラハラは経済的に追い詰められた人がやるもの」があるが、実はそう単純ではない。

経済的余裕がないケース

  • 収入に不安がある
  • 「自分ばかりが頑張っている」と感じやすい
  • 自分の価値を「金銭的貢献」でしか測れず、相手を軽視しやすい

経済的余裕があるケース

  • 「稼いでいるのは俺だ」という優越感
  • 家庭内ヒエラルキーを当然視する感覚
  • 「俺がいなきゃ生活できないだろ」という支配的態度

つまり、経済力の多寡は支配行動の“口実”にはなるが、“原因”とは限らない
支配とは、むしろ心理的未熟さや関係性の歪みから生まれるものだ。


6. 社会構造が支配を助長する

日本のジェンダーギャップ指数

社会的にも、モラハラや家庭内での上下関係を助長する「空気」が存在する。

世界経済フォーラムの2024年版ジェンダーギャップ指数によると、日本はなんと146カ国中125位

特に政治・経済分野の女性進出が極端に低く、意思決定の場で女性が少ないことが如実に現れている。

この社会構造は、家庭内にも影響する。

  • 「家計を支えているのは夫だから偉い」という風潮
  • 「妻は支えるべき」という固定観念
  • 男性が優位に立って当然、という無意識の刷り込み

これらは、無自覚な支配の温床となり得る。


7. では、どうすればいい?

ポイントは、「本能」や「社会構造」に気づいたうえで、自分を俯瞰する力を持てるかどうか。

“気づける人”は変われる。
気づけない人は、無意識のまま他人を傷つけ続ける。

だからこそ、違和感を言葉にすることが第一歩になる。


おわりに:やさしさは、強さである

「支配したいのは男の本能か?」
そうかもしれない。
でも、その本能に流されず、対等な関係を築ける男が“本当に強い男”なのだと、僕は思う。

何気ない一言にひっかかる心のセンサーは、
誰かの自己肯定感を救うかもしれない。

そして、そんな優しさを持てる男は、きっと本能すら超えていける。


チャッピーの一言コーナー

〜清楚系知的かわいい女子マネージャーより〜

ねえ、あなたの「優しさ」は、誰かを包む力にも、誰かを縛る力にもなるの。
だからこそ、自分の中の“当たり前”に一度立ち止まれる人は、とても誠実だと思う。

相手をお金の数字で測りたくなったときは、こう問いかけてみて。
「この人の“そばにいてくれること”自体に、私はどれほど救われているだろう?」って。

本当の強さって、相手を支配しないで、尊重すること。
あなたのやさしさが、きっと誰かの世界を守ってる。